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セルゲイ・シェプキンのゴルトベルク [Black]

昨春、つまり2007年3月に、セルゲイ・シェプキンは日本を初めて訪れ、すみだトリフォニーホールの《ゴルトベルク変奏曲》シリーズの第2変奏(?)に登場した。Ongakuという名のレーベルから10年以上前に出されたシェプキンのデビュー盤を、その前年に愉快そうに手渡してくれたのは、同ホールのプロデューサーのUさんだった。ちなみに、いまもぼくの部屋には、そうしてべつのレコードが待機している。

さて、コンサートのシェプキンは少々上がり気味で、ライヴの醍醐味を鮮やかに伝えつつ、目くるめく走り去ってしまった。もっと先をみせてくれるのではないか、という期待は後に残った。けれど、創意や工夫がふんだんに施され、つねに動態で提示されていて、熱く刺激的だった。シェプキンのピアノは、愉楽と驚きに満ち、そして、すごくグルーヴィなんだ。

つまりは、また新しくライヴで聴きたいピアニストがシェプキンなのだが、6月24日にすみだ再来ということが決まり、先のCDの国内盤も心ある人の手でリリースされた。このピアニストの真価が堪能できるかと思うと、待ち遠しい。

*
『intoxicate』 vol.72
セルゲイ・シェプキン interview
始まりがあり、終わりがあって、その間に人生がある。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲

バッハ:ゴールドベルク変奏曲

  • アーティスト: シェプキン(セルゲイ), バッハ
  • 出版社/メーカー: ディアハート
  • 発売日: 2008/02/20
  • メディア: CD


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歌う女優 [Black]

美しき冒険者がみるオペラの夢。
ナタリー・デセイは、進化を続けるディーヴァだ。
ベルカントへと表現領域を拡げる彼女の挑戦は、目下探検中といったところだろう。
2007年11月の来日時に話をきくと、ナタリー・デセイは自分のことを「歌う役者」と定義した。
「人間として自分を実現していくものを職業にしたい、とずっと思っていた」とも。
インタヴュー記事を、『Dear』という女性誌のオペラ小特集のために書いた。

旧知の編集者と久々に再会したので、言われるままに、
"Contributors"のページにもちょこっと顔を出したりした。

*
「Dear」 2008年3月号
<The Cultural Perspective> ナタリー・デセイ interview
<Dear Contributors>

Dear (ディア) 2008年 03月号 [雑誌]

Dear (ディア) 2008年 03月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: エスクァイア マガジン ジャパン
  • 発売日: 2008/02/12
  • メディア: 雑誌


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私が音楽する理由 [Black]

いま思い出したのだけれど、たとえば『LIFE』というレコードのなかに「ぼくらが旅に出る理由」という曲があって、小沢健二はこんなふうに歌っている。「ぼくらの住むこの世界では 旅に出る理由があり/誰もみな手をふってはしばし別れる」。友部正人が「どうして旅に出なかったんだ、ぼうや」と、ぼくに迫ったことも重ねて苦くも思い出されてくる。もちろん、旅に出るにしても、出ないにしても、なんらか理由はあったり、なかったりする。

さて、クラシックの演奏家と話をしていると、ときどき不思議に思うことがあって、それは彼や彼女があまりにもそのままに音楽を職業としているようにみえることだった。歴史をわざわざ振り返らなくても、ちょっと前までは職業を世襲的に継ぐのはあたりまえのことで、ぼくの中学校の同級生はそうしてお蕎麦屋さんになったし、むしろサラリーマンなどというものがおかしな感じもするが、サラリーマンだって自由業だって業種が違うだけで、世代を超えて同じようなことをしている人はいっぱいいる、というか大半だろう。社会が安定したりしていると、とくにそういうことは起こりやすい。

しかし、音楽家に対してなんらかの思いを抱いたりするぼくたちは、ストーンズが人生を変えたとか、仲井戸"CHABO"麗市が初めて自分の意志で手に入れた武器がギターだった、という話をきくと、やはり心強く感じたりするものだ。そうしたこと、事件といってもいいことの多くは、しばしば思春期に起こる。ところが、クラシックの演奏家が10代半ばから楽器を始めたということはあまり聞かない。楽器を高度に技術的に習得するだけの時間が必要だから、幼少の頃から楽器を習う機会を与えられる。希望はあっても、選択ではない。

つまり、彼や彼女には旅に出る理由はあったけれど、それは必ずしも自覚を伴うものではなかった。しかし、そうしていち早く旅に出たことに気づいた時分には、その旅を続ける理由を考える瞬間があったりなかったりするのではないか、とぼくは思う。生きていくことは、しかもプロフェッショナルを生き抜くことは、それを意識するしないに関わらず、やはりたいへんなことであるに違いないだろう。

彼や彼女は音楽家だ。そしてぼくは音楽家ではない。心のうちで音楽家でありたいと思う瞬間はあったとしても、彼らに憧れるのとはやはり違う。だから、尊敬をもって、この距離を活かしたいと思った。幻想や希望とはべつに、人にはそれぞれ事情があって、それは語られたり語られなかったりする。それでぼくは、「どうして音楽をするのですか」と言ってみたり、あるいは「始めたことはともかく、続けていくにはなんらかの理由があるでしょう」などいう問いを、彼や彼女にさらりと、ときにはしぶとく投げかけた。

鳥が飛ぶように、魚が泳ぐように、人が二足歩行をし、すべての生き物が息をするように、という自然がその答えであってもいい。選択をさしはさむ余地があるなら、それは天職ではない、という考えかただってある。なにをどう応えてくれるにせよ、そのときの微妙な身振りや空気の揺れをこそ、ぼくは感じとって伝えたいと思った。もちろん、そうたずねるからには、どうしてぼくは彼らに「私が音楽する理由」を聞いているのか、という問いはつきまとうし、ぼくはどうして音楽を聴くのか、人に会って話を聞き続けるのか、ということも、いつも心に浮かび上がって、くるくると泳ぎまわる。

自分は音楽に仕える司祭のようなものだ、とアルド・チッコリーニは静かに語った。「音楽の友」誌でのロング・インタヴューをしたときのその言葉と、そのときに彼が湛えていた慎ましい空気は、ずっとぼくの心に響いていた。巨匠の話を聴くのはそれだけで味わい深かった。加えて、20代から30代の若い音楽家をドキュメントしたい、と当時のぼくは強く思っていた。たんに年齢が近いだけでなく、音楽の環境が時代のなかで変容するなかで、彼らがどのように真摯な探究を続けていくのかを、同時代の人間としてききとりたいと思った。

そんなわけで、編集のHさんと意気投合して旅を始めたのが、2005年の春で、それから早くも3年がめぐった。ぼくのセント・クリストファーは、一年くらいすると、同年代の彼から少し上のNさんに変わったけれど、幸いなことに楽しく航海は続いていった。「私が音楽をする理由」はさまざまだった。しかし、彼らの音楽が響いていく場所が、18~19世紀ではなく、現代の聴き手の心にあることは同じだった。

ジャン=ギアン・ケラス(vc, 2005年4&5月号)で始まったアリアと変奏曲は、ルノー&ゴーティエ・カプソン(vn&vc, 6)、大萩康司(g, 7)、小菅優(pf, 8&9)、ジャン・ワン(vc, 10)、ダニエル・ハーディング(cond, 11&12)、石坂団十郎(vc, 06/1)、 レイフ・オヴェ・アンスネス(pf, 2&3)、高木綾子(fl, 4)、ピオトル・アンデルシェフスキ(pf, 5&6)、ヒラリー・ハーン(vn, 7)、金聖響(cond, 8&9)、佐藤俊介(vn, 11)、村治佳織(g, 06/12&07/1)、ファジル・サイ(pf, 2)、エマニュアル・パユ(fl, 3&4)、ラファウ・ブレハッチ(pf, 5)、マルティン・シュタットフェルト(pf, 6)、清水直子(va, 7)、ラデク・バボラーク(hr, 8&9)、矢部達哉(vn, 10)、鈴木大介(g, 11)、アレクサンドル・タロー(pf, 12)、セルゲイ・ナカリャコフ(tr&flh, 08/1)、下野竜也(cond, 2)と続いていった。いろいろな風景のなかで、それぞれの季節のなかを歩く表現者たちと出会えた。こうして34号にわたり、26人の素晴らしい音楽家たちが、それぞれの言葉で語ってくれたことは、いまこの世界で生きていくぼくたちにとって大切な思いを多く含んでいたように感じる。じっさい、総集編を記すにあたって、ぼくはその全部を読み返してみたのだけれど、改めて考えることがたくさんあった。

取材に応えてくれた26人の音楽家のみなさんとその関係諸氏に感謝と敬意を。厳しい時代を生き抜いていく知恵と勇気をありがとう。そして、これからもよろしくお願いします。また、せっかく若い世代で展開するのだから、ということでフォトグラファーも比較的年近い方々に参加していただいた。武藤章さんを中心に、長澤直子、青柳聡、山本博道、堀田力丸の各氏が、表情豊かなポートレイトとスナップを撮り下ろしてくれた。細かくは記さないが力を貸してくださった通訳の諸氏、そして上記2人と編集長をはじめ「音楽の友」誌の方々に謝意を。もちろん、最大の感謝は毎回もしくは折々の読者になってくれたひとりひとりに。スケジュール等の都合がつかず、何人もの音楽家とは機会を逃してしまったが、それはまたどこかで。

*
「音楽の友」 2008年3月号
<シリーズ> Why music ? ~私が音楽する理由 #35
総集篇 「始まりでも終わりでもないアリア」

音楽の友 2008年 03月号 [雑誌]

音楽の友 2008年 03月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2008/02/18
  • メディア: 雑誌


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北海道のみなさんへ [Black]

昨年、ロストロポーヴィチの記事を書いた北海道新聞から、
文化面の「ウエーブ」という欄に音楽のコラムを依頼されて、
2008年新春から月1回のペースで連載することになった。
クラシックをベースにいろいろなことを盛り込めるようなので、
ふだんさまざまに考えたり感じていることも、少しずつ反映できればと思う。
記者の方と楽しく話をしながら、いい旅が続けられるといい。
せっかくなので、久しぶりに北海道にも行きたくなってきたところで、
明18日、第2回の掲載予定なので、お手元に近い方は気が向いたらお読みください。

*
「北海道新聞」 2008年2月18日 <ウエーブ音楽>
(#02 ボビー・マクファーリン、コミュニケーションをめぐって)

「北海道新聞」 2008年1月21日 <ウエーブ音楽>
(#01 ペレーニ・ミクローシュ、故郷と世界をめぐって)


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ピアニストたち [Black]

5年ぶりの新版となるONTOMO MOOKの「ピアノ & ピアニスト」。
たくさんのピアニストのなかの何人かについてぼくも書いた。
2003年版を併せて眺めると、どこかしら時代と流行の推移を感じさせる。
まあ、さまざまな事情によるのだろうけれど。

*
ONTOMO MOOK 『ピアノ & ピアニスト2008』

マルク=アンドレ・アムラン、ピオトル・アンデルシェフスキ、
ファジル・サイ、ティル・フェルナー、フランク・ブラレイ、イングリット・フリッター、
フレデリック・ジェフスキ、キース・ジャレット、パイク・クン・ウー、を担当執筆。

ムック Piano&Pianist 2008 ピアノ&ピアニスト 2008 (ONTOMO MOOK)

ムック Piano&Pianist 2008 ピアノ&ピアニスト 2008 (ONTOMO MOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2007/12/15
  • メディア: ムック


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ケラス、菊地裕介、その他の報告 [Black]

(年末年始の活字活動報告、その3)

年の瀬がもうずいぶん遠くに感じられる今日この頃、
思い出したようにアップ、防備録的な。
久しぶりの『CDジャーナル』。そして、
さらば、作曲家の恋よ。

*
『レコード芸術』 2008年1月号 
<海外盤試聴記>原田英代(pf) "グリーグ: 抒情小曲集"(Audite)
フィリップ・ビアンコーニ (pf) "ラヴェル:ピアノ作品集"(Lyrinx)

レコード芸術 2008年 01月号 [雑誌]

レコード芸術 2008年 01月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2007/12/20
  • メディア: 雑誌

『CDジャーナル』 2008年2月号
<Artist Interview> 菊地裕介 (pf)
「いま、内で燃えている焔を 外に出していきたい」
<特集②> 2007 My Best 5

CD Journal (ジャーナル) 2008年 02月号 [雑誌]

CD Journal (ジャーナル) 2008年 02月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽出版社
  • 発売日: 2008/01/19
  • メディア: 雑誌

『月刊 piano』 2007年12月号
<連載エッセイ> 大作曲家の恋 #18(最終回) バッハ

Piano (ピアノ) 2007年 12月号 [雑誌]

Piano (ピアノ) 2007年 12月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
  • 発売日: 2007/11/20
  • メディア: 雑誌

『intoxicate』 vol.71
<Interview> ジャン=ギアン・ケラス(vc)
「鳥が飛ぶ意識、あるいは重力の虹」
http://blog.intoxicate.jp/content/2007/12/intoxicate12con_2eb0.html


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さらば、表紙の人よ [Black]

(年末年始のご報告、その2。)

「ムジカノーヴァ」の当時の編集長Oさんから、連載のお声がけをいただいたのは2002年の終盤だった。それが、「表紙の人」との出会いで、毎月違う顔つきをしたその人と出会ってきた。たいていは、直接お話をきいて、そのときのスナップをとるような気持ちで綴ってきた。いっぽう、ほんとうの写真のほうは武藤章さんが、しかも原則として白を背景にしたポートレートを撮り下ろして、毎月鮮やかに表紙を飾った。もちろん、ほぼ裏表紙に置かれたぼくの文章の掲載ページにも、モノクロで対話しているときのピアニストたちが自然な表情でいてくれて、なんだかそれが楽しみだった。

そういうことが、ほぼまる5年、毎月続いて、ぼくたちはずいぶんたくさんの、それぞれに個性的なピアニストの面々と出会うことができた。途中で編集長がまたべつのOさんになり、レイアウトも少し変わったりしたが、2007年いっぱいまで僕たちはそういうふうに月を重ねてきた。

2008年からは雑誌が軽やかにイメージ・チェンジして、「表紙の人」はいるとしてもイラストになった。もちろん似顔絵ではないから、見知らぬその絵の人について、たらたらと絵文字でなにかを綴るわけにはいかない。かといって、ぼくや武藤さんがイラスト化することもやはりできない。ということで、「さらば、表紙の人よ」。おひらきの運びとなった。しかし、「表紙の人」というその人、ってほんとうは誰なんだか、いまのいまとなってはその正体がわからないのだった。

(そのかわりに月々のキャスティング・リストを掲載しようと思ったのだが、60人近くになるし、ちょっといま手がまわらないので、それはまたこんど。)

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『ムジカノーヴァ』 2007年12月号
<表紙の人> 宮川彬良 「譜面を音楽にするもの、そこにいちばん興味がある」

MUSICA NOVA (ムジカ ノーヴァ) 2007年 12月号 [雑誌]

MUSICA NOVA (ムジカ ノーヴァ) 2007年 12月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2007/11/20
  • メディア: 雑誌

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『ムジカノーヴァ』 2008年2月号
<STAGE> ピオトル・アンデルシェフスキ 2007年11月16日、王子ホール
「冒険の味を帯びた 不思議なほどの多様性」

MUSICA NOVA (ムジカ ノーヴァ) 2008年 02月号 [雑誌]

MUSICA NOVA (ムジカ ノーヴァ) 2008年 02月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2008/01/19
  • メディア: 雑誌


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